『鏡縁物語』
眼鏡箱には二人の妻が住んでいる。一人は花嫁のように新しい妻。金メッキのフレームは蜜月のような輝きをたたえ、水晶のレンズには晴れ渡る空全体が収まっている。私はいつも彼女を連れて宴に赴く。カフェの柔らかな灯りの下で詩集と共に過ごさせ、コンサートホールの天井で星明りを受け止めさせる。だが彼女は自由を求める蝶であり、タクシーのドアが閉まる瞬間に羽ばたき、突然の雨に傘をさす際にふと消え失せる。私に残されるのは、空の眼鏡箱の中に次第に冷めゆく凹みだけ。
もう一人は、長年連れ添った旧妻だ。左のつるには医療用テープが巻かれ、戦時中の祖父の傷跡のよう。ノーズパッドには錆青銅の緑が浮かび、古い井戸端の苔を思わせる。彼女は寝台の引出しのひだの中に静かに横たわり、薬瓶や古い時計と共にある。ひとつひとつの傷は、深夜突然目覚めた時刻を記録している。夜明け前に文字を探して手探りする時、彼女は震えるように私の顔にかかる。すると瞬く間に、ほこりを被った世界に細い裂け目が走る——曇り始めた夜明けの光は、元々あまりに澄みきっているべきではないのだと気付く。
新しい花嫁たちは永遠に理解できない。なぜ最も不器用な抱擁ほど、涙の跡を受け止められるのかを。流行のフレームは軽すぎて、急ぎ足ですべり落ちる。輝きすぎて、ろうそくの炎を見つめる時に虚ろな光を反射する。だが古いレンズは、長年を経た薄氷のようで、すべてのぼんやりとした悲喜を受け入れてくれる。私たちが共に育ててきた皺は、とっくにフレームの両側で根を下ろし、芽を出している。
今朝もまた玄関でためらい、指先は二つの眼鏡箱の間を揺れ動く。新しい眼鏡はベルベットの中で匕首のようにきらめき、老眼鏡は布袋の中で古い友のように微温かい。最終的に私はドアを押して朝霧の中へ歩み出る。近所の人の視線が耳の後で蜘蛛の巣を織るに任せて——彼らには永遠に見えない、二本の斑となった刻み目が私の鼻梁にどう根を下ろしているかを、故郷の山脈が遊子の背骨に続くように。
良き宝玉は江湖に遺すがよい。私はこの欠けた瓦片と共に、人間界を叩いて尋ね歩こう。
MQtech1 代表取締役社長 宮本神龍
作成年月日:2025年11月2日